地唄・歌詞

 
     
  (あし)(かり)≫ 地唄  
 

名に高き 難波の浦の夏景色 風にもまれし葦の葉の ざわざわざわと音に聞く ここには伊勢の浜荻を 葦や蘆とは誰がつけし われは恋には狂わねど 恋という字に迷う故 さりとては白鷺よとどまれ とまれと招く手風に行き過ぎて またも催す浜風に 蘆も沢立ち磯の波 松風こそはざざんざ

〈解説〉 零落して蘆刈人となった男が妻と再開する説話により、謡曲(蘆刈)の中にも 難波の浦での蘆刈の風情が描かれている。蘆(悪し)と葦(善し)とを対照させ、白鷺に(知る)をかけるなど、縁語や掛詞など和歌の用法を存分に取り入れた曲

 
     
 

(あや)(ぎぬ)  地唄

 
 

鶯の 都の春にあいたけど 気は淀川へ上り舟 支えられたる北風に 身はままならぬ丸太舟 岸の柳に引き留められて 歩みならわぬ陸地をも 上りつ戻れ幾度か 一夜を明かす八軒家 雑魚寝を起こす綱島の 告ぐる烏か寒山寺 尽きぬ話の種となりけん

 
     
 

≪露の蝶≫  地唄

 
 

世の中は 何に譬えん飛鳥川 昨日の淵は今日の瀬と 変わり易さよ人心 今は 此身に愛想もこそも 月夜の空や鳥鐘を 恨みしことも仇枕(あだまくら) 憂きを知らすや草に寝て 花に遊びて朝には露に養う蝶々の 身ぞ羨まし味気なや 思い切りなき女子気の涙に浸す袖 袖枕

〈解説〉 人の心がなんと変わりやすいものかと訴え、今はこの身に愛想がつきたのか、暁を告げる鳥の声を恨んだ事も今となっては無駄になってしまったと嘆き、自分の境遇とは異なり、露を慕う可憐な蝶の恋を羨ましがる、涙にくれるわが身の情けなさとやるせなさを唄ったもの。

 
     
 

≪竹の縁≫  地唄

 
 

いつか根引きの色まさる 肌(はだえ)の雪の下紐解けて 竹の子までも 説くるならば ほんにお前も嬉かろ 二人根笹の諦めからむ 夜更き閨の私事(ささめごと) ああしどけないのが若竹の 好いた同士は節も無く 幾千代こめし竹の縁

〈解説〉 竹は古くから四季を通じて色を変えないことから、目出度いものとされ、ここでは、恋を成就した幸せな男女の様を唄っていることから、ご祝儀曲として舞われている。