上方唄・歌詞

 
     
 

≪京の四季≫

 
 

春は花 いざみにごんせ東山 色香あらそう夜桜や うかれうかれて粋も不粋
も物がたい 二本ざしでもやわらこう 祇園豆腐の二軒茶屋 みそぎぞ夏はう
ち連れて 川原につどう夕涼み よいよいよいよいよいやさ
真葛ケ原にそよそよと 秋ぞ色増す華頂山 時雨をいとう傘の 濡れて紅葉の
長楽寺 思いぞ積もる円山の 今朝も来て見る雪見酒 エエ そして櫓のさし
むかい よいよいよいよいよいやさ
〈解説〉京都の四季の風趣が読み込まれていて、音頭風の囃子が入り賑やか、
舞妓がお座敷で舞う代表的な曲。

 
     
 

≪紀伊の国≫

 
 

紀伊の国は音無川の水上に 立たせ給うは舟玉山 舟玉十二社大明神 さて東
国にいたりては 玉姫稲荷が三囲へ 狐の嫁入りお荷物を かつぐは 強力
稲荷様 頼ねば田町の袖すりが さしづめ今宵は待女郎 仲人は真っ先真っ黒
な 黒助稲荷につままれて 子までなしたる信田妻
〈解説〉玉姫稲荷、三囲稲荷、強力稲荷、浅草の袖摺稲荷、九郎助稲荷など、
吉原周辺の稲荷社を詠み込み、狐の嫁入りをうたっている。

 
     
 

≪露は尾花≫

 
 

露は尾花と寝たという 尾花は露と寝ぬという あれ寝たという 寝ぬという
尾花が穂に出てあらわれた 蝶は菜種と寝たという 菜種は蝶と寝ぬという
あれ寝たという 寝ぬという 蝶は菜種にあらわれた 月は清水と寝たという
清水は月と寝ぬという あれ寝たという 寝ぬという 月は田毎にあらわれた
〈解説〉露と尾花、蝶と菜種、月と清水といった縁の深い風物を、艶っぽく表
現、田毎の月は、長野県更科の姥捨山山腹にある棚田に映る月のことをいう。

 
     
 

≪愚痴≫

 
 

愚痴じゃなけれど コレマァきかしゃんせ 偶に逢う夜の楽しみは 逢うて嬉
しさ別れの辛さ エエなんの烏が意地悪な お前の袖とわしが袖 合わせて唄
の四つの袖 路地の細道駒下駄の 胸おどろかす明けの鐘