地唄・歌詞

 
     
 

≪縁の綱≫

 
  春はいつ 傘に降らるる雪よりも つれなき人の冷たさを 六つの歌仙も詠みわびて やた
けごころに恋すちょう かざすや金の簪の さす手引く船の磯へも寄せず 沖にゆらゆら由
良の戸の おつととり梶合点じゃえいか ああようそろ のんこ 帆を巻き立ての舟唄は
丸に三つ引き引恋風や  君に扇の替紋は 色の司を求めん手管 仲を隔つるまぜの菊 咲
きしも憎や夕照りに 顔は紅葉の恋の鬼 丹波大江の山よりも まさる思いや八雲立つ 出
雲八重垣つまごめは 何処へ結ばん縁の綱
 
     
 

≪鐘が岬≫

 
  鐘に恨みは数々ござる 初夜の鐘をつく時は 諸行無常とひびくなり 後夜の鐘をつく時は
是生滅法とひびくなり 晨(じん)(ちょう)の響きには 生滅滅為 入相は寂滅為楽とひびけ
ども 聞いて驚く人もなし 我も後障の雲晴れて 真如の月を眺めあかさん
言わず語らず我が心 乱れし髪の乱るるも つれないは只移り気な どうでも男は悪性もの
桜々とうたわれて 言うて袂のわけ二つ 勤めさえただうかうかと アアどうでも女子は悪
性もの 吾妻育ちは蓮葉な者じゃえ
恋の分け里数え数へりゃ 武士も道具を伏編笠で 張りと意気地の吉原 花の都は歌で和ら
ぐ敷島原に 勤めする身は誰と伏見の墨染 煩悩菩提の撞木町より 浪花四筋に 通ひ木辻
の禿立ちから 室の早咲きそれがほんの色じゃ 一イ二ウ三イ四ウ 夜露雪の日下の関路を
共にこの身を 馴染みかさねて中は円山ただ丸かれと 思い染めたが縁じゃえ
 
     
 

≪東山≫

 
  蒲団着て 寝たる姿は古めかし 起きて春めく知恩院 その桜門の夕暮れに 好いたお方に
逢いもせで 好かぬ客衆に呼びこまれ 山寺の入相告ぐる鐘の声 諸行無常は儘の川 わし
は無情に上りつめ 花のいただきどれ往てみよう 花はうつろうものなれど 葉こそ惜しけ
れ 惜しけれ葉こそ 緑の目立ち 色ふかみ草
 
     
 

≪すり鉢≫

 
 

海山を 越えてこの世に住みなれて 比翼連理と契りし仲を けむりをたつる賤の女が 心
ごころに逢わぬ日も 逢う日も夜はひとり寝の くれを惜しみて待つ山かずら 昼のみ暮ら
す里もがな