地唄・歌詞

 
     
 

≪江戸土産≫

 
 

仮初の 夢も浮寝の仇枕 結ぶ契りは深見草 花に戯る越後獅子
笛や太鼓の拍子よし つく杖たよりに都をさして のぼる法師の唐衣
きつつなれにし在原の なりも形も透き額月の眉墨武蔵坊 七つ道具の七化けと
変われど同じ色の道 芝(しば)翫(もてあそ)ぶ 在所ながらも相模の蜑の笑顔もよしや難波津の
浦々までもかけて見る この一軸の朱鐘馗さんは 国を守りの神かけて
栄ゆる春こそ目出度けれ

 
     
 

≪石橋≫

 
  時しも今は牡丹の花の 咲きや乱れて 散るは散るは 散りくるは 散るは散るは
散るくるは 散れ散れ散れ散れ 散りかかる様で おいとしうて寝られぬ
花見て戻ろ 花見て戻ろ 花には憂さをも打ち忘れ
一目忍べば 恨みはせまい 為に沈みし恋の淵 心からなる身の憂さを
やんれそれはそれはえ まこと憂やつらや 思い廻せば昔なり
牡丹に戯れ獅子の曲 実に石橋のあり様は 笙歌の花降り 簫笛琴箜篌(しょうちくきんくご)
夕陽の雲に聞こゆべし 目前の奇特あらたなり 暫く待たせ給えや  影向(ようごう)の時節も
今幾程によも過ぎじ  獅子団乱旋(ししとらでん)の舞楽の (みぎん) 牡丹の英 匂い満ち満ち
大筋力(だいきんりきん)の獅子頭  牡丹芳(ぼたんぼう)打てや囃せや 牡丹芳  黄金(こうきん) (ずい)現われて
花に戯れ枝に伏し転び 実にも上なき獅子王の勢 靡かぬ草木の無き時なれや
万歳千秋と舞い納め 万歳千秋と舞い納めて 獅子の座にこそ直りけれ
 
     
 

≪猩々≫

 
  よも尽きじ よも尽きじ 万世までの 竹の葉の酒 くめども尽きず 飲めども変わらぬ
秋の夜の盃 影の傾く 入江になみ立つ 足もとはよろよろと 酔いに臥したる
枕の夢の 覚むると思えば 泉はそのまま 尽きせぬ御代こそ めでたけれ